オールうまいものノート

映画の感想メイン。読書、生活、カルチャー。

「空飛ぶタイヤ」感想(微ネタバレ)/その日は、すごく晴れてたんだ。

f:id:kasumigaseki0822:20180606001201j:plain

もう「空飛ぶタイヤ」見ましたか?

空飛ぶタイヤ」は、主演・長瀬智也、原作・池井戸潤の映画です。

池井戸潤といえば他にも「半沢直樹」や「下町ロケット」「ルーズヴェルトゲーム」などの作品が有名ですね。

金融業界や町工場の「仕事」に注目してきた彼が「空飛ぶタイヤ」で描くのは、運送会社や自動車メーカーで働いている人々です。

公開してからすぐに見に行きましたが、劇場は満杯でした。客層は中年男性やカップルが多かった印象です。

では、あらすじから説明していきますね。

 

空飛ぶタイヤ」のストーリー

f:id:kasumigaseki0822:20180623021222j:plain

長瀬が演じる「空飛ぶタイヤ」の主人公は、とある運送会社の社長。

その運送会社のトラックが脱輪事故を起こし、外れたタイヤに当たって女性が一人命を落とすところから事件が始まります。

長瀬の会社は整備の甘さを責められて、社会的な信用を失ってしまうんですね。

 

しかしいろいろ調べていくうちに、そもそもトラックの車体にはじめから欠陥があったのではないか、という可能性が浮上するのです。

資金不足や世間の強いバッシングにより会社がどんどん厳しい状況になっていっても、長瀬はどうしても諦めません。

なぜなら、車体に最初から欠陥があったとしたら、悪いのは自分の会社ではなくトラックを販売している自動車メーカーの方だからです。

 

長瀬は抗議の為にメーカーのカスタマーセンターにガンガン電話をかけます。

ここで、取引相手として堂々とお偉方に直談判にいけず、一顧客として電話をかけるしかないところに中小企業社長の悲哀を感じますね。

 

f:id:kasumigaseki0822:20180623021348j:plain

ちなみに、カスタマーセンターの責任者はディーンフジオカが演じます。

「こんなシュッとしたカスタマーセンターの責任者がいるだろうか」と思ってしまうのですが、カッコイイのでまあいいでしょう。

ただのクレーマーからの電話だと思って、ディーンフジオカは長瀬の必死の訴えに全然取り合ってくれません。

でも、彼は彼で自社が隠しているものに気が付き、行動を起こし始めます。

 

f:id:kasumigaseki0822:20180623021426j:plain

一方、自動車メーカーに資金援助をしている銀行の調査員である高橋一生も、隠されている闇を暴こうとし始めるのです……。


ということでこの映画の最大の見どころは、何人もの骨太な男性俳優たちが1つのズルを暴くために、力を尽くすというドラマ展開にあります。

 

空飛ぶタイヤ」のよかったところ

f:id:kasumigaseki0822:20180623023459j:plain

ここからは個人的な感想を掘り下げていきます。

 

正直、私はこの映画の価値観バランスを前時代的(古い)と感じてしまいました。

たとえば、エプロン姿で夫の帰りを待って、夫の脱いだジャケットをささっと片づける女性像は今時すでに一般的ではないと思います。

 

でも、この映画のターゲットとされているのが登場人物たちと同じように汗水垂らして働いている中年男性だとしたら。

20代女性の私なんかよりも、自宅で料理を作って待っている女性の姿が身近に感じられるのかなあと想像できます。

そしてその親近感が、長瀬が演じる主人公への共感性を高めるのかなあと思いました。

私はたぶん、ターゲットじゃないんだろうな。

だから、目くじらを立てるよりも、この王道かつ手に汗握るストーリー展開を楽しんだ方が得だなと思って見ていました。

 

シン・ゴジラに影響を受けたのか、次から次に登場するおじさんたちの肩書と名前を白文字で表示したりするやりかたも結構うまくいってると思いました。

群像劇の面白さを感じましたよ。

何よりちゃんと「勝つ」ところがいいですね。

物語的にはもちろん「勝つ」だろうってわかってるんですが、実際の社会ではこの映画のような立場の人たちが「勝てる」のは稀なことなので。

だから、気持ちいいですね。カタルシスがあります。

 

空飛ぶタイヤ」の持つじわじわした雰囲気

f:id:kasumigaseki0822:20180623023523j:plain

物語がじわじわと暑そうな真夏の晴れた日に展開していくのが、いいです。

こんな日のアスファルトやタイヤやスパナ、たぶんめっちゃ熱いんだろうなと想像できます。

働く彼らの作業着やワイシャツ、なでつけた髪の毛も汗でじっとりと湿ってるんでしょう。

映画の雰囲気に合わないと言う人もいましたが、サザンオールスターズの「闘う戦士たちへ愛を込めて」は、蒸すように暑い日の夕方のような曲調です。

仕事終わりのビールの泡が脳裏をよぎるような曲です。

プロレタリアートに、労働者階級に向けて歌われてるんです。

そう思うと、主題歌にぴったりじゃないですか。

 

じわじわじわじわ、照りつける日差しのなか、長瀬が事件解決のために歩き回った靴底のことを思うと、胸にグッときます。

きっと早々には買い換えられない革靴のことを思うとね。

 

空飛ぶタイヤ」感想まとめ

f:id:kasumigaseki0822:20180623023628j:plain

ある人にはリアルで、ある人にはファンタジーというのは、お仕事映画の面白いところですよね。

私にとっては、医療現場も警察の捜査も、そして運送会社や自動車メーカーもまた、「現実に存在するファンタジー」です。

ある種、時代劇を見るときのように、自らの現実とは一歩距離を置いて鑑賞しました。

最近会わなくなってしまった、小さいプレス工場社長の父の作業着の背中を思い出しながら。

そしたら、結構感動するくらい面白かったんですよ。

 

おすすめです。機会があったらぜひ見に行ってくださいね。