オールうまいものノート

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映画「レディ・プレイヤー1」感想/創造主・ハリデーとは誰なのか?

ネタバレするので、鑑賞前の人は鑑賞後にぜひ読んでください。

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レディ・プレイヤー1」見た、見ましたよ。

皆がめちゃくちゃ楽しそう。ブログやニュースサイトには次々に「イースターエッグ」の隠し場所について書かれた記事がアップされるし、SNSでは「自分ならどのアバターを使うか」で盛り上がってる。お祭り感がある。

どこにどんな「イースターエッグ」が隠されてるかは、他の方々のブログにほんとうに詳しく書いてあるので、ぜひぜひそちらを見てください。

人によって見つける「イースターエッグ」がそれぞれなのも面白いですね。人の数だけ鑑賞遍歴があるんですね。

 

レディ・プレイヤー1」は版権の枠なんか飛び越えたダイナミックな作品です。

でも一方で、スティーブン・スピルバーグという偉大な監督の、非常に個人的なメッセージが込められているとも思います。そして、ミクロな人間関係について描かれている部分に、スピルバーグの小さな思い入れを感じてます。

 

「ハリデー」について考えると、この映画はちょっとだけ違う表情を見せると思います。そこが好きなので、この感想では「ハリデー」について考えていきます。

 

ハリデーって誰なのか?

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ハリデーは、主人公パーシヴァルたちが遊んでいるVR世界「オアシス」の生みの親、創造主とも呼べる存在です。そして、少し前に亡くなってます。

ゴール・D・ロジャーさながら、「探せ!この世の全てをそこに置いてきた」と遺言を残したので、パーシヴァルはじめ「オアシス」のプレイヤーたちは、ハリデーが隠した「イースターエッグ」を必死に探しているのです。

ここ数年のスピルバーグ作品を見ている人は、マーク・ライランスが演じてるってだけで、「たぶんもっとも重要なキャラなんだろう……」って想像できますよね笑

そしてやっぱり彼の演技が素晴らしくて、ハリデーというキャラにより深みを持たせてると思います。マーク・ライランスが気になったらぜひ同監督作の「ブリッジ・オブ・スパイ」を見てほしい!

昨年のクリストファー・ノーラン監督作「ダンケルク」の役も渋かったので、ぜひぜひ……。

 

ハリデーはスピルバーグ? 

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ハリデーは、 ラストで「私のゲームで遊んでくれてありがとう」と言い、去っていきます。会話の相手はパーシヴァルですが、彼の目線はカメラを通して観客席の私たちに注がれます。ありがとう、楽しんでくれて、愛してくれてありがとう、と。

あの時のハリデーは、明らかにスピルバーグ監督自身と重なって見えます。

 

何本も傑作を撮った世界の巨匠が、純粋な感謝のメッセージを本気で伝えようとしていることに驚かされます。大好きな監督にまさかお礼を言われてしまうなんてね。

それに、受け手である私たちの愛は一方通行ではないのだ、と肯定してもらえた瞬間でもあります。それができるのは、スピルバーグ自身が受け手の気持ちを忘れていないからです。

 

そんな大事なメッセージを、託されてスピルバーグの代わりに口にしたのが、スピルバーグ映画の常連になりつつある名優マーク・ライランスだとしても全くおかしくない。

あの瞬間のハリデーはスピルバーグだったんだ!泣いちゃう!!!

 

もう一人の創造主

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ハリデーと共に「オアシス」の創設に携わったオグデン・モロー役はサイモン・ペグさんです。(鑑賞するまで、出てるの知らなくて、劇場で歓喜しました)

 

ハリデーは技術面、モローは広報や運営などビジネス面で才能を発揮し合って、「オアシス」を大きくしていきました。しかし、とある事情から二人は仲違い。ハリデーがモローを半ば騙すようにして株式放棄の書類にサインさせ、「オアシス」から追い出してしまいます。

そして二人は仲直りできないまま、ついにハリデーが亡くなってしまうのです。

 

この関係性を見て、Apple」のスティーブ・ジョブズスティーブ・ウォズニアックを思い出す人は多いと思います。私も見ていて思いました。でも、どっちがジョブズでどっちがウォズ二アックなんでしようか。

 

ハリデーはウォズニアック?

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才能の領域で言うと、ジョブズに技術面で優っていたウォズニアックがハリデーで、プレゼンやマネジメント能力に長けたジョブズがモローかもしれません。

↓この記事を読んで、なるほど~と思いました。

theriver.jp

(正直この記事を見つけたときは「先を越された……!!」と思いました笑)

以下、記事から引用です。

どちらかと言うとジョブズ的な立ち回りをしたのはモローの方だ。

 

ジョブズとウォズニアックの容姿と才能・役割を入れ替えたようなイメージ

サイモンペグさんは結構しゅっとした感じで演じてたけど、原作のモローはひげもじゃメガネみたいですね。一方ハリデーは背の高い痩せ体系、ということで見た目もかなりウォズニアックとジョブズを意識していそうです。

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(左がウォズニアックで、右がジョブズ

つまりこの記事では、

ハリデー=見た目ジョブズだけど中身はウォズニアック

モロー=見た目ウォズニアックだけど中身ジョブズ

だと考察してるわけですね。だから、ハリデーはウォズニアックだと。

 

「テクノロジーとは、ポップカルチャーそのもの。(中略)テクノロジーポップカルチャーに関わる人々は、実は同じなのです。週末にポップカルチャーを楽しんでいる人々の多くは、平日にはプログラマーやクリエイターの仕事をしているんです。」

というウォズニアックの言葉も、確かにハリデーが作った「オアシス」の理念と一致してるように思えます。ハリデーはウォズニアックなのでしょうか。

 

ハリデーはスティーブ・ジョブズ

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私はやっぱり、ハリデーはスティーブ・ジョブズなんじゃないかと思うんですよね。

確かにハリデーには華麗なプレゼンとか、事業拡大のマネジメントなんて、できないと思います。それは確実にモローの仕事だった。そこだけ見たら、ハリデーがウォズニアックで、モローがジョブズなんですよ。

でも、注目すべきは役割というよりも、むしろ……彼らのパーソナリティの部分だと思いました。

 

2015年公開の映画「スティーブ・ジョブズ」を見ただけで言うので、認識が甘いかもしれませんが、ジョブズは人とのコミュニケーションがあまりうまくない人だったんじゃないかなと考えてます。

 

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この映画でマイケル・ファスベンダーが演じたジョブズは、自分の理想を追い求めれば追い求めるほど、周りの人間との関係を悪化させる一方でした。

しかしそれでも、彼が世界のテクノロジーを進歩させるのに大きく貢献したことは間違いありません。

スピルバーグは、ジョブズについてこう言っているそうです。

スティーブ・ジョブズトーマス・エジソン以来の発明家だった。彼は私たちの指先に世界を置いてくれた。

「指先に世界を置いてくれた」という表現は、「レディ・プレイヤー1」で描かれる未来にもつながっているような気がします。

 

友人や家族とのコミュニケーションがうまくできず、親友を切り捨てて、それでも私たちの未来を楽しいものにしたジョブズは、ハリデーそっくりだと私は思います。

 

モローはウォズニアック?

ジョブズとは対照的に、ウォズニアックは人が良く、朗らかな人です。Appleを去ってからも変わらずジョブズを「親友」と呼んでいるそうです。

騙されるようにして「オアシス」を奪われたというのに、親友の意思を組んで若者の背中を押したモローは、ウォズニアックと被って見えます。

 

劇中モローと深くかかわるキーアイテムは「25セント硬貨」ですが……

ウォズニアックはジョブズに騙されてかなり安い値段で、アタリのゲーム開発をさせられたことについて、「25セントでも引き受けただろう」と言っているそうです。

これ、偶然じゃなくて意図的なんじゃないだろうか……!

ただ一方で、ジョブズは「自分にはピクサー社での収入があるからAppleでは1ドルの報酬しかいらない」と言って、実際に1ドルしかもらわなかったこともあるようなので、それもモローと被りますね。

もしかしたら混ぜ合わせたエピソードなのかもしれません。

 

感想まとめ

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というわけで、ハリデーとモローのほろ苦い関係にグッときてしまいました。

スピルバーグの代理という意味でも、物語をかき回す神というポジションにおいても、いろんな角度から見てハリデーはほんとうに魅力的なキャラクターです。

 

それにもちろん「イースターエッグ」の数々は本当に最高でした。

一番もう感動して泣いてしまったのはあそこです、メカゴジラ。アレンジされてはいるけど、確かにゴジラのテーマが画面から流れ出して涙腺が緩んでしまった。

 

ただ、冷静になっておかなければいけないなと思うのは、これは「前向き」な映画ではないということです。昔楽しんだ様々なポップカルチャーを懐かしみ、亡くなった人の言葉を思い返すことは、いけないことではないけれど、決して「前向き」ではない。

さらには、女性観・恋愛観などの描写に前時代的な印象も受けました。未来を舞台にしているから、夢も希望もちゃんとあるんだけれども、「最新」で「今」の映画ではなかった。

 

だから、これを言ってしまうとちょっと切ないけど、私は「ペンタゴン・ペーパーズ」のほうが好きです。

今後のスピルバーグ作品も楽しみ。100歳になっても元気で楽しみながら映画撮ってくれたらうれしい。