※ネタバレ注意
見ながら、「ああまた震災の話だ」と思ったんだよな。
もちろん日本でディザスタームービーを作るにあたって、ほんの6年前本当に起こった災害に影響を受けるのは当たり前なんだけど。
たとえば「シン・ゴジラ」は明らかに震災当時の状況を意識して描いてる。
「一度倒れても、また立ち上がれるよ、そういう国だよ」というメッセージも、震災後の日本へ向けたものだ。
人間が立ち向かってもどうにもならないようなゴジラという驚異に、観客があれほどの実在感を抱いたのも、震災があったからだ。
そうだったそうだった、最初は半信半疑で、どんどん被害が増えていって、やっと危機感を持ちはじめて、そう、この感覚覚えてる、と。
「サバイバルファミリー」はこの感覚覚えてる、を煮詰めて広げて深掘りして、ユーモアのエッセンスをふんだんに加えた、
秀作ディザスターコメディだった。
たとえば、事が起こったあとの学校シーン。
近くに住んでる生徒は出席できるけれど、電車で通っている生徒の席は空いている。
先生も到着するのか微妙。
まだ事態の重大性に気づいていない若者たちは、ちょっとの不安と「学校休みになるかもしれない」という期待に興奮する。
私も震災当時高校生だった。
すごく覚えのある感覚だった。
それから、スーパーマーケットのシーン。
なんとなくの不安に押されて、水や電池を買い求める客がお店に殺到する。
会計の列はいつもに比べて大分長い。
電気がないので、暗い店内。
当時、私はドラッグストアでアルバイトもしてたのだ。
計画停電で暗い店内、通路を埋め尽くすようなすごく長い列を解消するために、手計算でレジを打った。これも覚えてる。
ある日いきなり原因もわからず電気がなくなる、なんていうトンデモ設定なのに、ありえるんじゃないかとリアリティーを感じてしまうのは、
私たちが震災を経験したあとの日本人だからだ。
ゴジラに実在感を抱くようになった私たちが今後目の当たりにする映画は、どんどん変わっていく。
そこにいつもきっと震災がある。
アメリカを舞台にした映画のそこかしこに9.11の影があるのと同じ。日本にもそういうバックボーンができてしまったのだ。
「身に覚えがある」という感覚をより広範囲でカバーするために、主人公を家族4人にしたところがすごい。
おじさんも女子高生も共感できる、老若男女が楽しめる映画になってる。
あとは、古典的なヅラネタでちゃんと笑えるトーンになってたところも。全然サムくなかった。
これからどんどん、今の日本ならではの新しい切り口の作品が生まれると思うと、楽しみでしょうがない。