たぬきの映画日記

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あなたには幸せになって欲しかった。「ナラタージュ」感想

映画館で「ナラタージュ」を見ました。

 
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 (物語のネタバレしてます。)

この映画の原作は島本理生の「ナラタージュ」という小説で、監督は「世界の中心で愛を叫ぶ」の行定薫です。

 

繊細で湿っぽい雰囲気の良い映画なのですが、賛否が分かれそうだなあと思いました。

なぜなら、主演の有村架純松本潤が演じるキャラクターは、高校教師とその生徒という設定なのです。
今度公開される広瀬すず生田斗真の「先生!」も似た設定ですが、教師と生徒の男女の関係というのはかなり気をつけて描かないとアウトになってしまう。
二人の恋愛の機微ではなく、教師が生徒に手を出すなんてという部分ばかり気になる物語になってしまうんですよね。

 

さらに松本潤演じる葉山先生は、長く別居しているとはいえ、妻がいるのです。
有村架純演じる工藤泉に、「奥さんとは別れたんですか」と聞かれ、「うん」と答える。
自分を好いてくれている泉に、頼るような電話をかけたり気を持たせるようなことをして、あまつさえキスまでするんです。
それでいて、奥さんにまだ未練がありそうなそぶりを見せる。
「先生は私に奥さんとは別れたって言いました」
と責められるのも当たり前です。

 

一歩間違えば、葉山先生は若い女性の心をただ弄ぶひどい男にしか見えなくなってしまう。
いや、そう見える人もいたはずです。
だからこそ賛否が分かれているのでしょうね。

 

でも、私は「自分が葉山先生のようにはならない」と自信をもって言える人ってそれほど多くないんじゃないかと思います。

 

葉山先生は好きになった人の心を壊してしまってから、一人ぼっちで自分を攻め続け、自分の心も壊れてしまいそうになっている弱い人なのです。
そんな人だから、いじめられている泉の壊れそうな心に気づけたのです。

 

生まれてから死ぬまでずっと心も体も健康でいられる人なんていない。
自分の心が一番不健康なときに、慕ってくれる誰かが現れて、その人のところに逃げ込む選択しかできなくなっても全然不思議ではない。

葉山先生と同じ状況に立って、もっともっとひどいことをする人だってきっといるはずです。
だから葉山先生はやっぱり真面目で、弱い。

 

それに例えば泉に恋する小野くん(坂口健太郎)は、独占欲や葉山先生に対する嫉妬のあまり泉を束縛したりDV的な言葉を投げ掛けます。
あれだって、もし私が小野くんと同じような状況に置かれたら、精神的に不安定になって好きな人を傷つける言葉を吐くかもしれない。

 

痛めつけられた心はいとも簡単に理性や倫理観を押さえつけ、人を感情的な行動に走らせるのです。

 

恋ではなかったかもしれない。
葉山先生を思い続けることに疲れ泉が小野くんを選んだように、葉山先生も泉に逃げ込んでいただけなのかもしれない。

それでも二人が出会い、出会ったことで二人が前を向いて生きられるようになったのは事実なのです。


だからお互いに想う。

どうか幸せになって、と。

 

そういうことってきっとあるんだよな。
恋か恋じゃないか、正しいか正しくないかで測れないことってきっとある。

泉の止まっていた時間は動き出したので、葉山先生の時間が動き出していることを願ってしまいます。

 

あと……小野くんの時間も。

彼が不安で声を荒げたり、ふられそうになったときにオロオロしたり憤ったりする描写に共感しすぎて叫び出しそうになりました。

どんなに惨めでも情けなくても、なりふり構わず相手をひき止めたいことがある。
しかし、得てしてそうなってしまったら最後、相手の心は離れていくばかりなのだなあ。

ああ……不憫だった。

 

泉の足を写し出すカットは、小野くんのためにあるものなので、それで救われました。
彼が作った靴、誰か他の人が大切に履いてるといいな。