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人生は続く。生きていかなければいけない。「T2 トレインスポッティング」感想

4月8日公開の「T2 トレインスポッティング2」を見た。

※ネタバレ注意!

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最近は前作を見なくても楽しめる続編が多いけど、この作品は1996年の「トレインスポッティング」を見ていないと話がわからないので、予習した方がよさそう。

 

物語は前作で大金を持ち逃げしたレントンが、いきなり20年後故郷に戻ってくるところから始まる。

1万6000ポンドも手にしたのに、その後のレントンの人生は順風満帆とは言えなかった。

職を失い、40代半ばにして身よりもおらず、何か拠り所を求めて懐かしい友人たちの前に姿を現すのである。

レントンの裏切りは友人たちの人生を狂わせた。作中で彼らはそう言ってレントンを責める。

ベグビーは刑務所、シックボーイはくすぶって汚い仕事に手を染め、スパッドは薬物中毒……レントンが裏切らなくてもそうなっていた気もするが。

とにかくレントンは戻ってきた。

そして昔と同じような生活に身を浸し始める。

 

私にはレントンという人物がわからないのである。

時に彼の目の前には主人公と呼ぶにふさわしいようなチャンスが転がり込む。

就職したこともあるし、大金を手にして一度は「普通の幸せ」を手にした。

今作ではヴェロニカに体を許されたが、それは「現代からの受け入れ」であるのだ。

レントンにはいつでも前に進む選択肢が見えていたはずである。ダイアンとの恋愛だってそうだ。目の前に転がったそのチャンスを掴めば、また違う人生があったかもしれない。

しかし、彼はそれを掴み取らない。

掴み取ったとして、破滅を享受し同じところに戻ってきてしまう。

なぜなのだ、レントン

それはきっとクズとして育ちクズに囲まれクズでいることが楽だからかもしれない。

 

作中ですごく好きなシーンがある。

それはスパッドが部屋の改装に熱中し、やがて薬物のことを忘れていくシーンである。

序盤レントンに「何かに夢中になればやめられる」とアドバイスされ、そのまま素直に話を聞いてボクシングをやりにいく。

当然うまくいかないが、スパッドのその素直で純粋な心に胸を打たれた。

彼はほんとうに薬物をやめたいのだ。愛する妻と息子に会いたいのだ。

そんなスパッドが本当に楽しそうに夢中で作業をする。

作中一番と言っていいくらい明るく幸せなシーンである。

彼に救いがあるのは当然だ。だって、「スパッドは根がいい」から。前を向いて進んでいける。

 

対象的なのはベグビーである。

彼は20年間閉じ込められ、おそらくレントンへの憎悪にとらわれ続けていた。

前に進むことができず、久しぶりに再会した息子や世間とギャップを感じても、当たり散らすばかりで理解には及ばない。

興味深いのは2009年のインタビューで、ダニーボイル監督が「ベグビーはゲイ」と明言していることである。

そういう前提を持って「T2 トレインスポッティング」を見ると、ベグビーがレントンに抱いていた感情を深読みしてしまう。

まさに「愛憎入り交じって」いたのかも。

もしベグビーがレントンを特別視していたとしたら、「ベグビーには良心が痛まなかった」「ベグビーはいい、」というような作中のセリフが鋭いナイフのように思えてくる。

それをスパッドの書いた自伝という形で目にしてしまったベグビーはどう思っただろう。

宙ぶらりんになったレントンにしがみついた時何を考えていたんだろう。

 

彼は結局刑務所に逆戻りで、変われないでいるのかもしれない。

だけど、レントンを追いかけながら勃起したあの瞬間変わることができたのだと私は信じたい。

自分も思っていた自分とは違うのだと気づけたことが、息子と和解するきっかけになったと思うのである。

 

レントンたちは20歳年をとったけど、「トレインスポッティング」も「T2 トレインスポッティング2」も、ラストで描いているテーマは同じ。

人生は続く。

生きていかなければいけない、ということ。

20年後に60代になったレントンたちで「T3」やってほしいっていう意見があったけど、そういうことだったのね。

前作よりキャラクターを深掘りしてるので、彼らをもっと好きになれる素晴らしい続編だった。

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